第二章 旅の健康は睡眠から 車中泊に必要な設備


 車で寝る、と口で言うのは簡単だが、これが案外難しい。人間というのは、ちゃんとした睡眠
環境がないと、安眠することは困難なのだ。自由で気軽に休める反面、それなりの設備が整っ
ていなければ快適な睡眠はとれないのである。
 車中泊の旅をするのなら、快眠できるだけの準備と心がけはしておくべきなのである。



[車]

 車の中で快眠するには、車自体が相応のものでなければならない。
 シートを倒して眠るというのがごく普通のスタイルなのだが、残念ながらこれでは眠気を取る
だけで、満足な睡眠はとれないのである。人間は平らな場所に寝てこそ、ゆっくりできる生き物
なのだ。

 そこで、手足は伸ばせなくとも、少なくともストレスなく横になれるだけの平らなスペースを用
意することが重要である。ツーリングワゴンなら荷台にマットを敷くとか、ワンボックス車なら後
部シートをフラットにして、その上にマットを乗せるとか。運転席のシートが後部座席との組み
合わせでフラットになる、とかいうのもあるが、これはほぼ役に立たない。凹凸などがあると完
全フラットにはならないから、寝返りも打てないし、しばらくすると身体のあちこちが痛くなってく
る。快適な睡眠には、「平らな就寝スペース」が必要なのだ。
 私の愛車テラノは、キャンピング仕様なので後部座席から後ろがベッドになる。横になれば
普段と何ら変わらない熟睡も可能だ。
 3ドアハッチバックとかのコンパクトカーでは、車内寸法が小さすぎて寝るスペースがとれな
い。ジムニーなどの小型四駆も同様。こういう車では、テントを使ってのキャンプにした方がよ
いと思う。

 車で寝るにはもっとも快適なのがキャンピングカー。ほとんどは小型トラックをベースにしたも
ので、キッチンやベッド、車両によってはシャワーやトイレまでついている。コンパクトとはいえ、
普通の家とほぼ同じ内容の暮らしができるのだから、これはすごい。ただし、図体が大きくなる
から、車としての性能は落ちる。もちろん普通の乗用車が走行できる道しか走れない。林道な
ど、悪路や狭隘路を走行するのは困難だ。キャンピングカーは、どちらかというと「車で寝泊ま
りする」ことに比重を置いた車である。逆にいえば、仮眠程度に使うのではせっかくの設備もも
ったいないのだ。北海道などでキャンピングカーをよく見るが、昼間はのんびり気ままに走って
観光をして、夕方になると宿泊地でゆったり車中の暮らしを楽しむ、そんな使い方の人がほと
んどのようだ。私のように、とにかく時間ある限りあちこちを走りたい人間には、まだこういう贅
沢な車は不要のようだ。ちなみに私の車も登録上「キャンピング車」となっているが、あくまで書
類上の分類であって、ベッドでは起きあがることもできない。

 北海道を旅したとき、道の駅ですぐ隣に足立ナンバーのコンパクトカーが止まった。若い男性
の一人旅だったが、狭い車内でシートを倒して車中泊をしている。これでは長い旅も疲労でつ
らいだけだろうと、気の毒になった。



[寝具]

 快適な眠りに欠かせないのが、布団などの寝具である。
 中には古くなった家庭用の布団や、いらなくなったこたつ布団などを利用する人もいるようだ
が、車内では非常にかさばるから問題がある。やはり現実的には寝袋だろう。ホームセンター
に行けば、キャンプ用品のコーナーにはたくさんの寝袋が売られている。高級な有名メーカー
の品から安いものまであるし、性能によって値段もバラバラ。大きく分けてマミー(人形)型と封
筒型があるが、ふつう防寒性では前者が、快適性では後者が勝ると言われる。車で使うには
入手しやすく使いやすい封筒型がよいだろう。冬でも使えるタイプは値段も張るが、普通のも
のを二つ持っていれば、重ねて使うことで対応できる。
 寒い時期は毛布を1枚持っていると心強い。寝袋と毛布を組み合わせれば、氷点下でも車
中泊が可能である。



[その他]

 できれば目隠しと日よけの意味で、カーテンの類が欲しい。フロントはカー用品店で売ってい
るサンシェードでよいが、側面やリアの窓も塞げるとベスト。

 冬の寒さと夏の暑さも問題。暖房や冷房はエンジンをかけないと利用できないが、環境保護
や騒音公害を防ぐため、車中泊の際はエンジン停止を心がけたい。暑さは窓を開けたり扇風
機を使う、寒さは寝具を工夫すれば何とかなる。
 私の愛車には電気毛布を積んでいる。もちろん車のバッテリーを使えばエンジン起動不能に
なってしまうので、搭載している別の電源から給電している。問題は電池容量の少なさで、フル
充電してもすぐに消耗してしまう。何か手を考えたいところである。
 夏は極力高地に、冬は逆になるべく低い土地に宿泊するのも一つの方法だ。

 窓を開けての車中泊の時は、場所選びにも注意。明るいからと街灯の直下に駐車すると、光
につられて集まってきた虫で、とんでもないことになる。街灯からは少し距離を取って、車内で
照明を使わないようにする。窓ガラスに網をつければ完璧だが、そこまでしなくても大丈夫だろ
う。


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